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未発見所持品

下山氏の所持品のうち、ロイド眼鏡、ネクタイ、喫煙器具などは警察の徹底的な探索によっても発見することはできませんでした(『真実を追う』p89-91、『封印されていた文書 Part1』p426-427)。これらの所持品が現場周辺から見つからなかったことは不自然であると、他殺説の文献では強調されています(『シモヤマ・ケース(文庫版)』p239、『下山事件 最後の証言(増補完全版)』p98、185、『葬られた夏(文庫版)』p132、156)。つい確かにおかしいと思ってしまいがちですが、枕木上の血痕群や下山油などと同じで、これが本当に「不自然」で「特別」なことなのか、ということをまず最初に確認する必要があります(本サイト管理人の印象では、他殺説の文献ではこのプロセスが抜け落ちている場合が多いように思われます)。具体的にいえば、一般的に鉄道自殺の場合に所持品は全て見つかるものなのか否かを調べなければ、下山事件のケースが不自然かどうかは分からないのです。

結論から先に述べると、遺体にせよ所持品にせよ、完全に揃うことのほうがむしろ珍しいようです(『下山事件全研究』p495)。実際、下山事件の場合にも、ワイシャツは福島県の平駅で発見されていますし、褌の一部と思われる布片は轢断列車を点検した際に水戸機関区で見つかっています(『刑事一代』p219、『下山事件全研究』p495)。これらは運良く見つかったからよいものの、駅と駅の間の地点で落ちていたなら、おそらく発見されることはなかったでしょう。錫谷徹氏の『死の法医学』には、轢断死体の顔頭部面右側の軟組織(分かりやすく言うと、顔の右側がお面のように頭蓋骨から剥がれたもの)が列車に付着し、福島県から北海道まで運ばれた例も示されています(p185)。また、下山事件では完全な現場保存までに4時間を要していて、その間に人に拾われた可能性もあるうえ(『下山事件全研究』p182)、轢断列車を含め、検証までに上り下り9本の列車が通過しており、その風圧で所持品が飛ばされ土手下の水田や池に深く潜ってしまえば、発見することはやはり困難です(『真実を追う』p91)。

なお、余談ですが、煙草関係は全てが見つからなかったのではなく、上着のポケットには未開封のピース一箱、開封済で何本か吸われているピース一箱がそれぞれひとつずつ見つかっています(『生体れき断』p93)。

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