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『取るに足らない事件』

『取るに足らない事件』、早川いくを(著)、平成20年(2008年)、バジリコ株式会社

太平洋戦争敗戦後、GHQによる占領時代に起きた「新聞の片隅に小さく報じられ、そして瞬時に忘れ去られ」るような「ドジでマヌケでスットコドッコイ、どうにも話にならぬバカバカしい事件」を当時の報道からピックアップして著者のコメントとともに紹介した本。「“お金を出しなさい” いやに優しい強盗」、「『強盗は初めて』 病人慰め、ねばる三人組」、「被害者にさとされ更生を誓って自首」、「“マネー、マネー” 外人強盗真似て捕る」、「本妻が妾宅へ強盗」、「ワラ人形に呪いの釘 忍びの名人捕る」…などなど、記事の見出しだけでも取るに足らないことがわかる、しかし興味をそそられる事件を数多く取り上げています。著者は漫画家の根本敬氏が主張する「性マヌケ説」(人間の本性は善でも悪でもなく、マヌケなのだという説)なるものを紹介していますが、確かに本書の事件記事を読むとなるほどと思わされます。しかし、敗戦直後の貧しい日本で起きたマヌケで人間臭い事件を見る著者の目は愛情に満ちているように思えます。おそらくそこに歯を食いしばって一生懸命に生きる庶民の息遣いを感じたからではないでしょうか。実際に読んでいても、バカバカしい事件ばかりなのに(当時の食糧事情や貧困を考えれば簡単にバカバカしいと片付けられない事件も多く収録されていますが)、何故かノスタルジックな切なさのようなものを感じさせる不思議な本でした。なお、「マッカーサーはノッペラボー」という著者による簡単な戦後史の解説の中で軽く下山事件、三鷹事件、松川事件にも触れています。未読ですが、この本は続編も出ているようです。

昭和22年の日本
占領下の風景。『サン写真新聞 “戦後にっぽん”昭和22年』(毎日新聞社)より。

昭和22年の日本
占領下の風景。『サン写真新聞 “戦後にっぽん”昭和22年』(毎日新聞社)より。

昭和24年の日本
公共職業安定所に集まる失業者。『サン写真新聞 “戦後にっぽん”昭和24年』(毎日新聞社)より。

昭和24年の日本
警官に取り上げられたヤミ米。『サン写真新聞 “戦後にっぽん”昭和24年』(毎日新聞社)より。

昭和24年の日本
三等車には座席のないものもあった。『サン写真新聞 “戦後にっぽん”昭和24年』(毎日新聞社)より。

昭和26年の日本
占領下の風景。『サン写真新聞 “戦後にっぽん”昭和26年』(毎日新聞社)より。

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