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『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』

『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』、佐々木 嘉信(著)、平成16年(2004年)、新潮文庫

管理人がこの本を初めて読んだのは、まだ自殺説の文献を調べる前のことで、どちらかといえば他殺の可能性のほうが高いと考えていた時期でした。ですので、下山事件を扱っている章を読んでも全く期待はずれな気持ちになったのを覚えています。謀略めいた話を期待していたのだから当然といえば当然です。以前紹介した麻生幾氏の『封印されていた文書』と同じく、他殺だろうと思って読むと全く面白くありません。人によっては自殺説を強く主張する平塚八兵衛という人物そのものに信頼を置けなくなるでしょう。

下山事件の部分の内容を読むと、平塚氏が事件発生当初は他殺だと考えており、手柄を立てるいいチャンスだと意気込んでいたこと(これは平塚氏に限ったことではありません)、下山夫人が真っ先に危惧したのは自殺であること、多数の目撃証言を得るうちに警視庁が自殺説に傾いていく様子などがわかります。平塚氏は捜査結果から自殺を確信していますが、それゆえに他殺情報を期待して読む人には自殺だと頭から決め付けているように見えるかもしれません。

下山事件以外では帝銀事件、吉展ちゃん事件、三億円事件など、平塚氏が関わった多くの大事件の顛末が茨城弁の混じりのべらんめえ口調で語られ、職人気質の刑事の仕事ぶりや考え方とはこういうものなのだろうなと思わされます。巻末の吉展ちゃん事件の犯人の墓参りに平塚氏が訪れるエピソードは涙を誘います。

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