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『国鉄の戦後がわかる本 上巻』

『国鉄の戦後がわかる本 上巻』、所澤秀樹(著)、平成12年(2000年)、山海堂

昭和20年から43年までの国鉄の歴史を述べた文献です。昭和24年のセクションでは下山事件、三鷹事件、松川事件にも簡単ではありますが触れています。この年の国鉄発足は日本鉄道史における大きな転換点ですが、一般庶民にとってはどうでもよかったらしく、さして話題にものぼらなかったことなどが書かれています。

下山氏の死体運搬に使われたのではないかと言われた1201列車を始めとする連合国軍専用列車(Allied Limited、Dixie Limited、Yankee Limited)は、昭和21年に誕生しており(1201列車は4月22日)、当初は臨時列車でしたが需要が多かったため定期化されています。連合国軍専用列車には状態のいい客車が接収され使われ、白帯が巻かれるとともに「ALLIED FORCES」とか「US ARMY」という文字が書かれていました。日本人はどんなにお金を積んでも乗ることのできない豪華な連合国軍専用列車を「白帯車」と呼んで羨み、敗戦という事実を痛感していたといいます。

下山氏が東京鉄道局長時代に起きた高麗川列車脱線転覆事故(昭和22年)や、加賀山氏が国鉄総裁を退任するきっかけになった桜木町事故(昭和26年)などについてもコンパクトに紹介されています。高麗川列車脱線転覆事故は死者184名、負傷者497名を数える大惨事でした(死傷者の数はソースによって微妙に違いますが200人近いのは確かなようです)。ところでなにかと人情家で正義感の強い人物として語られる下山氏ですが、この事故の際には責任をとって辞職しなかったため、内部からは驚きの声があがり、冷たい人間という評価が定まったとも言われています。これに対し、加賀山氏のほうがむしろ人望があり、シャグノンの言う無理難題にも臆することなく抵抗していたということです(佐藤一著『松本清張の陰謀』、p36)。

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