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『戦後十年 秘録・流転にっぽん』

『戦後十年 秘録・流転にっぽん』、キング八月特大号付録、昭和30年(1955年)、講談社

昭和30年発行の古い文献です。共同通信社会部次長の松尾義雄氏による「警視庁の内幕」という章で、下山事件自殺発表中止にまつわる警視庁、政府、GHQそれぞれの思惑などが書かれています。共同通信社会部というと、他殺説の斎藤茂男氏を思い出しますが、筆者の松尾氏は自殺だと考えており、「(下山事件は)都合によりハッキリしなかったのだというほかない。ハッキリしなければならない時期に、横槍が入ったためその時期を失ったというのが真相である」と述べています。松尾氏によると、「捜査一課の徹底的な捜査の結果、自殺である可能性が非常に高く、しばらく捜査を継続しても(これは二課の捜査のことだと思います)何も出てこなかった場合には、自殺を警視庁内部の統一的な結論としようということになった。しかし、GHQと、その威をかりた日本政府によって、警視庁が単独で自殺という結論を新聞に発表したり、自殺を断言するのは慎むように条件が付けられた」ということのようです。その後いわゆる「下山白書」が流出し、「自殺説が流布すれば喜ぶのは共産党のみ」とGHQは激怒し、警視総監田中氏や刑事部長坂本氏は叱責され、官房長官増田氏からも吊るし上げられたということです。この一件では捜査一課長堀崎氏らが訓戒処分を受けています。

流転にっぽん
『戦後十年 秘録・流転にっぽん』表紙

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